きく(菊)

    プロフィール

  キク科キク属の多年草で、学名は Chrysanthemum grandiflorum。
  ふつうに「きく」といえばキク科キク属の植物ですが、世界で200種ほどあります。このうちわが国で自生する「のぎく(野菊)」は20種ほどで、観賞用に育てられているのは、ほとんどが「いえぎく(家菊)」と呼ばれるものです。わが国へは、古い時代に朝鮮を経由して渡来ましたが、もともとは薬用植物でした。また「菊」という漢字にほかの読み方がないのは、薬の専門用語として使われていたためだそうです。
  系統・品種と用途

  「いえぎく」は「わぎく(和菊)」とも呼ばれます。頭花の大きさによって、直径18センチ以上の大菊、9〜18センチの中菊、それに9センチ未満の小菊に分類されます。また欧米で改良された「ようぎく(洋菊)」もあります。このなかで、家庭で容易に育てられるのは「こぎく」と「ようぎく」です。
  栽培のポイント

  「こぎく」を栽培するにあたっての基本条件および栽培のポイントはつぎのとおりです。なお作型は、品種によって異なる場合がありますので、タネ袋に記載されている内容をよく確認してください。

気候区分

作業

1

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3

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11

12

温暖地

種まき

植えつけ

花期

気候区分

まきどき (春|秋)

収穫時期 (春|秋)
寒 地 04/上〜05/下   10/上〜10/下  
寒冷地 03/下〜05/中   10/上〜11/上  
温暖地 03/中〜05/上   10/上〜11/中  
暖 地 03/上〜05/上   10/上〜11/下  

ご注意

  発芽温度は10〜25℃、生育温度は5〜30℃なので、これを外れるときは、加温または遮熱をしてください。

 


152025

発芽適温

15-20

生育適温

15-25

栽培のポイント

  日当たりの良い場所で、十分に日光をあてて栽培してください。

 

pH

5.06.07.0

土壌酸度

5.5-6.5

栽培のポイント

  水はけのよい、弱酸性に近い中性を好みます。酸性土壌では石灰を施し、よく耕してから栽培にとりかかってください。

 


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栽培間隔

0-(1)


栽培のポイント

  顕著な連作障害はでませんが、連作を続けると生育が不良になってきます。できるだけ休栽したほうがいいでしょう。
  栽培のステップ

  「こぎく」を栽培するとき、種まきから開花期までの作業ステップは、およそつぎのようになります。ここでは、小さなホームガーデンを想定した一般的な方法を説明しています。

 

ステップ

内容

種まき・育苗

(1) 連結ポットや育苗箱にタネまき用土を入れ、ばらまきします。覆土はごく薄く掛けます。












(2) 発芽したら間引きをして、本葉が2〜3枚のころに3号ポットに植え替えて育苗します。

植えつけ

(1) 庭植えの場合は、1平方メートルあたり完熟堆肥5kgと腐葉土5kg、苦土石灰100g、有機配合肥料50gなどをすき込み、鉢植えの場合は、赤玉土小粒5に腐葉土4、堆肥1の割合で混ぜたものに緩効性肥料を加えて用土とします。

(2) 本葉が7〜10枚くらいになったら、日当たりと水はけのよい場所に、株間30センチで植えつけます。鉢植えでは、6号鉢に1株が目安です。




生育管理

(1) 生育をみながら1か月に1回くらい有機固形肥料を施すか、1週間に1回液肥を与えます。

Chrysanthemum

Chrysanthemum

Chrysanthemum

Chrysanthemum

Chrysanthemum

Chrysanthemum


(2) 土の表面が乾いてから、たっぷりと水を与えます。湿っているのに潅水すると、根腐れの原因になります。

(3) 8月末までは乾き気味に育て、9月に入ってから水を十分に与えるようにします。また花が7分咲き以降は、水を控えた方が花もちが良くなります。

(4) 8月上旬ころまでに、軽い摘芯を数回繰り返し、分枝をうながします。

(5) 蒸れて下葉が枯れてきたら、取り除きます。また葉が混みすぎているときは、葉を取り除き、風通しをよくします。
  おもな病害虫

  「きく」には、かなり病虫害があり、薬剤散布などで防除することが欠かせません。

病害虫名

症状
対策

アブラムシ類

  体長2〜4ミリの小さな虫が、新芽や茎に群がって汁を吸います。

  パイベニカ乳剤やオレート液剤などの殺虫剤を散布します。小面積の散布には、スプレータイプが手軽です。他の害虫も多いので、オルトラン粒剤を散布して、予防することも効果的です。

ハダニ類

  葉の裏に寄生して汁を吸います。被害が進むと白っぽく絣(かすり)状になります。

  テルスタースプレーやパイベニカスプレー、園芸用でんぷんスプレーなどの殺虫剤を散布します。

ハモグリバエ

  幼虫が葉を食害し、その痕が白い線状となって残ります。

  痕跡をみつけたら、指先でつぶして駆除します。

ウイルス病

  モザイクウイルスが主な病原体で、新しい葉に、モザイク模様や糸葉症状がでます。

  薬剤では治療することができないので、株を抜き取り、焼却処分します。

白さび病

  葉に白色から黄白色の斑点ができます。裏面にはいぼ状の胞子堆ができます。

  サブロールなどの殺菌剤を散布して防除します。

灰色かび病

  低温多湿時に発生します。花やつぼみ、茎葉などに灰色のかびが生えます。

  繁殖力が強いので、早めに発生した部位を取り除き、焼却します。そのあとベンレート水和剤やトップジンMゾル、ダコニール1000などを散布します。
  「きく」のQ&A

  Q1:「きく」の茎頂が萎れ、やがて枯れます。
  A1:「きく」の茎の先が萎れ、やがて枯れてしまうのは、キクスイカミキリ(幼虫)の被害と考えられます。キクスイカミキリは茎の先端から10cmくらい下に3か所の傷をつけ、その間に産卵します。被害を受けた枝は切り戻して、枝先を処分します。被害が広範なときは、殺虫剤を使用して防除します。

  Q2:「きく」は植えたままでいいですか。
  A2:「きく」は、同じ場所で続けて育てるとよく育ちません。育てる場所を替えるか、同じところで育てるときは土壌消毒をしたあと、腐葉土などの有機物をたくさん入れ、土壌改良をしてから植え直します。土壌が過湿にならないように、水はけのよい場所を選ぶか、高うねにして植えます。
  写真提供: 「ボタニックガーデン」  イラスト: 「ころぽっくる」 by lemさん
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