肥料の与え方


  野菜の栽培に良い土とは

  野菜の栽培に良い土の条件には、つぎのようなことがあります。
(1) 雑草の根やタネ、病原菌や害虫が混ざっていないこと。
(2) 気相(空気の部分)が30%ほどあり、通気性がよく、乾きやすいこと。
(3) 排水性(水はけ)が良いこと。
(4) 液相(水の部分)が30%ほどあり、保水性がよいこと。
(5) 保肥力(肥料を保持する力)がよいこと。
(6) 土を活性化させる有機物が、ほどよく含まれていること。
(7) 植物に適した酸度になっていること。一般的には弱酸性(pH5.5〜6.5)。
(8) ほどよい重さになっていること。ふつう1リットルあたり400〜600g。

  良い土にするために


Kuro-tsuchi     わが国では酸性土壌が多く、リン酸やマグネシウム、カルシウムなどの必須元素が欠乏しがちです。そのため、野菜や花などの栽培をするとき、良い土にするためは、完熟堆肥などの有機質肥料を充分に与えて地力や保肥力を高めることはもちろんですが、酸度の調整や有機質肥料では間に合わない必須元素を補うために肥料の施肥が必要となります。
  肥料の種類と組み合わせ

  ふつうはまず、土壌酸度(PH)と、これまでの栽培経験から、肥料として何を使用したらいいか決めていきます。そのときに「肥料の組み合わせ」ということがが大切になります。一般的にいえば、完熟堆肥やその他の有機質肥料に消石灰、熔成リン肥を中心として、中性からアルカリ性の複合肥料をサブに使うことが安全です。

01   硫安・過リン酸石灰・重過リン酸石灰・複合肥料(酸性)
02   石灰窒素・混合窒素肥料・重炭酸カリ
03   硝安
04   溶成リン肥・焼成リン肥・骨粉類・複合肥料(アルカリ性)
05   消石灰・生石灰・草木灰
06   硫酸カリ・塩化カリ・硫酸カリ苦土
07   苦土過リン酸・混合リン肥(溶過リン・重焼リン)
08   ホウ酸肥料・ホウ酸塩肥料・IB窒素(イソブチルアルデヒド)
09   魚肥・植物油かす・その他の有機質肥料・完熟堆肥

  01 02 03 04 05 06 07 08 09 10
01 - × ×
02 × - × ×
03 -
04 × - × × ×
05 × -
06 × × - ×
07 -
08 × × -
09 -
10 × -

○: 混ぜてもOK、いい組み合わせ。
△: 混ぜても問題はないけれど、使いにくくなる組み合わせ。
▲: 混ぜると化学変化が起こり、無駄が生じるので良くない組み合わせ。
×: 混ぜてはだめ、有害だったり、無効化だったりする組み合わせ。

  完熟堆肥や苦土石灰、有機配合肥料の使い方

  野菜や花の栽培のとき、完熟堆肥や苦土石灰、有機配合肥料の使い方には、品種によって違いがあります。実際には、畑や花壇の栄養状態によって異なりますが、一般的な施肥量です。有機配合肥料のNPK比は、8−8−8としています。

品 種 完熟堆肥 苦土石灰 有機配合肥料
アーティチョーク 2〜3kg 100g 100g
あぶらな 2kg 100g 80g
いちご 2〜3kg 120〜150g 100g
いんげんまめ 2〜3kg 100〜150g 100〜150g
えんどう 2〜3kg 120g 50〜100g
オータムポエム 3kg 120g 80g
オクラ 2〜3kg 150g 100g
オレガノ 2〜3kg 150g 100g
か ぶ 2kg 100g 100g
かぼちゃ 3kg 150g 100g
キャベツ 2kg 100g 120g
きゅうり 3kg 100g 120g
ごぼう 2〜3kg 120〜150g 100g
こまつな 2kg 100g 60g
さつまいも 3〜5kg -g -g
ししとうがらし 3kg 150g 120g
じゃがいも 2〜3kg 50g 100〜150g
しゅんぎく 2kg 100g 60g
しろうり 3kg 100g 80g
スイートマジョラム 2kg 100g 100g
すいか 3kg 150g 50g
ズッキーニ 3kg 100g 100g
スペアミント 2kg 50g 50g
そらまめ 2〜3kg 100〜120g 100g
だいこん 2kg 100g 80〜100g
たいさい 2kg 100g 80g
だいず(えだまめ) 2kg 100g 50g
たかな 3kg 120g 100g
たまねぎ 2〜3kg 100〜150g 80〜100g
とうがらし 2〜3kg 150g 120g
とうがん 3kg 150g 100g
とうもろこし 3kg 150g 120g
トマト 3kg 150g 100g
なす 3kg 150g 120g
にがうり 3kg 150g 80〜100g
にんじん 2〜3kg 100〜150g 80〜100g
ね ぎ 3kg 120〜150g 100g
のざわな 2kg 100g 100g
はくさい 2kg 100g 100g
はだいこん 1kg 100g 60g
はつかだいこん 2kg 100g 100g
ピーマン 3〜4kg 150g 120g
ブロッコリー 2〜3kg 100〜150g 100〜120g
ペパーミント 2kg 50g 50g
ほうれんそう 3kg 150〜200g 100〜120g
まくわうり 2〜3kg 100〜150g 80〜120g
みずな 2kg 100g 60g
ミニトマト 3kg 150g 80g
メロン 2〜3kg 100〜150g 80〜120g
らっかせい 1〜3kg 100〜200g 60g
レタス 2〜3kg 100g 80〜100g

品 種 完熟堆肥 苦土石灰 有機配合肥料
あさがお 3〜4kg 100g 30〜50g
アスター 3〜5kg 50〜100g 50g
おだまき 5kg 50g 30g
かすみそう 3kg 100g 30g
きんせんか 5kg 100g 30g
キャットミント 2kg 50g 50g
ゴデチア 5kg 50〜100g 30g
スイートピー 5kg 100〜200g 50g
スターチス 5kg 50〜100g 50g
ちどりそう 3kg 100g 50g
なでしこ 5kg 50〜100g 50g
ネモフィラ 3kg 100g 30〜50g
はなびしそう 5kg 100〜200g 30g
はぼたん 5kg 100g 30g
パンジー 5kg 100g 50g
ヒソップ 1kg 50g 50g
ひょうたん 3kg 150g 100g
ふうりんそう 5kg 100g 50g
べにばなつめくさ 5kg 50〜100g 30g
むぎわらぎく 3kg 100g 50g
モナルダ 2〜3kg 100g 100g
ラベンダー 2kg 50g 60g
リナリア 3kg 100g 50g
ルピナス 3kg 50〜100g 50g
れんげそう 5kg 50g 30g
ロベリア 5kg 100g 50g
わすれなぐさ 5kg 50〜100g 50g

  「肥料の」のQ&A

  Q1:土が硬くなって作物が育ちにくくなりました。
  A1:土が痩せて団粒性が損なわれ、十分な孔隙がなくなっていると考えられます。これを改善するには、完熟堆肥を1平方メートルあたり2〜3kgを入れて、天地がえしまたは深耕するようにします。

  Q2:堆肥は肥料ですか。
  A2:堆肥は、チッ素・リン酸・カリの三要素の含有量が1%以下と、ごく微量です。したがって堆肥だけで、作物を育てるのは難しいといえます。でも堆肥には、有用な土壌微生物を増やし、通気性や保肥性、保水性を増すという土壌改良の効果があります。作物を育てるときは、堆肥と肥料を併用することが大切です。

  Q3:酸性土壌では、作物が良く育たないといわれますが、なぜ。
  A3:酸性土壌だと、いろいろな原因で作物の生育に障害ができます。
(1) アルミニウムイオンの障害
酸性土壌ではアルミニウムが溶けだしてきます。アルミニウムイオンは一般的な植物には有害であり、植物に必要なリン酸を吸収できなくさせます。
(2) 養分吸収の障害
酸性土壌では、カルシウム、マグネシウム、カリなどの吸収が阻害され、植物に必要な養分を吸収できなくなります。
(3) 土壌微生物の活性低下
酸性土壌では、チッ素を植物に吸収しやすい形にしたり、空気中のチッ素固定する土壌微生物の活性が著しく落ちます。
(4) 土壌団粒構造の破壊
酸性土壌では、腐植質土壌の団粒構造を壊してしまいます。

  Q4:石灰を散布するのが良いといわれますが、なぜですか。
  A4:多くの作物は、pH5.5〜6.5の弱酸性土壌でよく育ちます。わが国は雨が多く、雨水(ふつうpH5.6程度)によって土壌の酸性化が進むとともに、土中でも微生物の活動によって二酸化炭素の濃度は大気中よりもはるかに高く、これも土壌の酸性化を促進しています。また、畑などでは、作物が養分吸収する際に根からでる有機酸による酸性化も加わります。したがって、作物を良く育てるために、石灰を散布して土壌を中和することになります。

  Q5:石灰の使い方を教えてください。
  A5:石灰は土壌改良材として主にpHの矯正を目的に使用されます。いろいろな種類がありますが、それぞれの特徴を踏まえて、使用することが大切です。
(1) 生石灰:いわゆる石灰のことで、資材の中で最もpH矯正力がありますが、強すぎるためほとんど使用されません。
(2) 消石灰:水酸化カルシウム。pHの矯正力は生石灰に次いであり、土壌改良材として使われています。(土壌酸度を1上げるには、土1リットルあたり0.8〜1.2gが目安。)
(3) 炭カル:炭酸カルシウム。pHの矯正力はあまりありませんが、徐々に効果をあげることができるので、使用するには安全な資材です。(ふつうは炭酸カルシウムに苦土(マグネシウム)を加えた苦土石灰が使われます。土壌酸度を1上げるには、土1リットルあたり1.0〜1.5gが目安。)
(4) カキ殻有機石灰:カキがらを粉砕したもので、アルカリ分は40%前後です。(苦土石灰よりも安心ですが、すぐには溶けないので酸度矯正効果もはじめは薄いものです。そのため、初めのうちは苦土石灰と併用します。)


  写真提供: 「ボタニックガーデン」
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