ほうれんそう(菠薐草)


    プロフィール

  アカザ科ホウレンソウ属の一・二年草で、学名は Spinacia oleracea。
  トルコの東部からアフガニスタンあたりの中央アジアが原産です。古代ペルシャにおいてすでに栽培され、食用にされていました。その後東西に伝わり、中国とヨーロッパでそれぞれ独立した品種群が形成されました。雌雄異株で、4月から6月ごろ小さな黄緑色の花を咲かせます。雄花は茎の先の穂状花序に、雌花は葉腋につきます。名前の「ほうれん(菠薐)」とは、中国語でペルシャを指すそうです。
  系統・品種と用途

  「ほうれんそう」は、大別すると3つの系統になります。中国で土着した東洋系(在来種)、ヨーロッパで育成された西洋系、それにこれらの正逆交雑や系統内交雑による交配系があります。東洋系は日長に敏感で抽苔が早いので、秋・冬栽培に利用され、葉の切れ込みが深く根ぎわが赤いのが特徴です。また西洋系は日長に鈍感で、春・夏栽培にも利用され、葉が厚く丸みのあるのが特徴です。
  栽培のポイント

  「ほうれんそう」を栽培するにあたっての基本条件および栽培のポイントはつぎのとおりです。なお作型は、品種によって異なる場合がありますので、タネ袋に記載されている内容をよく確認してください。

気候区分

作業

1

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11

12

温暖地

種まき

植えつけ

収穫

気候区分

まきどき (春|秋)

収穫時期 (春|秋)
寒 地 03/下〜06/上 05/中〜07/上 08/中〜09/下 09/中〜11/中
寒冷地 03/中〜05/下 08/下〜10/上 05/上〜06/下 09/下〜11/下
温暖地 03/上〜05/中 09/上〜10/中 04/下〜06/中 10/上〜12/下
暖 地 02/下〜05/上 09/中〜10/下 04/中〜06/上 10/中〜01/上

ご注意

  発芽温度は5〜30℃、生育温度は5〜25℃なので、これを外れるときは、加温または遮熱をしてください。とくに夏まき栽培をするときは、昇温と病害の抑制のためにトンネルやハウスでフイルムによる雨よけ対策と寒冷紗による遮光対策が必須です。

 


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発芽適温

15-20

生育適温

15-20

栽培のポイント

  冷涼な気候を好み、耐寒性があります。暑さにはとても弱い性質です。

 

pH

5.06.07.0

土壌酸度

6.0-7.5

栽培のポイント

  ほとんど中性に近い土壌を好みます。酸性土壌ではかならず石灰を施し、よく耕してから栽培にとりかかってください。

 


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作付け間隔

1-(2)


栽培のポイント

  連作障害がでますので、いちど栽培したところでは、少なくとも1年は栽培しないようにしてください。
  栽培のステップ

  「ほうれんそう」を栽培するとき、種まきから収穫までの作業ステップは、およそつぎのようになります。ここでは、小さなホームガーデンを想定した一般的な方法を説明しています。

 

ステップ

内容

畑の準備

(1) 酸性土壌に弱いので、植えつけの2週間くらい前までに、1平方メートルあたり150〜200gの苦土石灰を施し、よく耕します。

(2) 畝全体に、1平方メートルあたり3kgの完熟堆肥と100〜120gの有機配合肥料を施し、よく混ぜ込みます。ベッド幅90cm、高さ10cmほどの畝を立てます。

種まき

(1) 種皮が固く、発芽抑制物質がついているので、タネをまく前に、一晩冷水に浸します。種皮を取り除いたネーキッドシードの場合は、水に浸す必要はありません。

(2) 畝の表面を木ぎれなどで均し、畝と直角に条間20センチ、深さ1〜2センチほどのまき溝をつけます。






(3) タネを1センチくらいの間隔で条まきします。覆土を掛けて軽く転圧し、たっぷりと水を与えます。

間引き・追肥

(1) 本葉が1〜2枚のころに、3センチ間隔に間引きます。










(2) 本葉が4〜5枚のころに、5〜6センチ間隔に間引きます。

(3) 2回目の間引きの後に、必要に応じて、有機配合肥料を条間に施し、土寄せします。

収穫

(1) 草丈が20〜25センチくらいになったら、大きなものから収穫します。








(2) 日が長くなってくると、抽苔(とうだち)します。「ほうれんそう」は雌雄異株で、雄株と雌株があります。写真は上が雌株、下が雄株です。





  おもな病害虫

  「ほうれんそう」には、アブラムシやヨトウムシなどの害虫がつき、べと病やモザイク病も発生します。
  「ほうれんそう」のQ&A

  Q1:「ほうれんそう」が黄色く枯れてしまいます。
  A1:「ほうれんそう」が黄色くなって枯れてしまうのは、酸性土壌や排水不良が原因です。「ほうれんそう」はほとんど中性に近い土壌を好み、酸性土壌ではかならず石灰を施し、よく耕してから栽培にとりかかることや、十分な排水対策をとっておくことが大切です。

  Q2:「ほうれんそう」が抽苔しました。
  A2:「ほうれんそう」は長日・低温の条件で花芽分化し、その後の高温によって抽苔(とうだち)が促進されるようになります。とくに東洋種は日長に敏感で、12〜13時間の日長で感応します。その点、西洋種は多少暖かくなり、日長が伸びても花芽分化が遅いので、春蒔きには西洋種が一般となっています。西洋種の日長感応は、14〜16時間です。

  Q3:「ほうれんそう」が抽苔しました。
  A3:「ほうれんそう」が抽苔する原因としては、一般的につぎのようなことが考えられます。
(1) 温暖長日条件下(12〜16時間)では、播種後およそ2週間で花芽が形成され、抽苔してきます。ただ、花芽が形成されても低温短日下では抽苔は徐々にしか行われませんが、これが温暖長日条件下では、抽苔が促進されます。
(2) このほかの条件として、密植にすると抽苔しやすくなったり、チッ素不足や水分の過小・過多による栄養不足になると、花芽分化が早まり、抽苔しやすくなります。
(3) また、工場や街灯の明かりに感知しても、抽苔することがあります。

  Q4:「ほうれんそう」のタネが発芽しません。
  A4:「ほうれんそう」のタネが発芽しない原因としては、温度や覆土、潅水などの不良が考えられます。発芽温度が5℃以下や30℃以上では発芽不良となります。また「ほうれんそう」は好光性種子ではないので、覆土は5〜10mmが基準ですが、これが厚すぎると発芽後の「立ち枯れ」などの原因になります。また種皮が固く、発芽抑制物質もついているので、十分に潅水を行わないと発芽不良になります。

  Q5:「ほうれんそう」の葉に不規則な黄斑ができます。
  A5:「ほうれんそう」の葉に、表面に不規則な黄斑ができ、裏側に灰色のかびが生えるのは「べと病」です。 これは低温多湿時に発生し、病状が進むと株全体がいじけたようになり、枯れてしまいます。病変のある葉を取り除き、殺菌剤を散布して、通気をよくします。

  写真提供: 「ボタニックガーデン」  イラスト: 「ころぽっくる」 by lemさん
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