いんげんまめ(隠元豆)
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プロフィール
マメ科インゲンマメ属の一年草で、学名は Phaseolus vulgaris。
メキシコ南部から中央アメリカにかけてが原産です。わが国へは17世紀に隠元禅師が伝えたものといわれています。
生育期間が短く、極早生種ならわずか50日で収穫できます。関西地方では、一年に3回も種まきできることから「さんどまめ(三度豆)」と呼ばれます。ふつうは春にまき、夏に収穫する作型です。
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系統・品種と用途
「いんげんまめ」には、緑色の若いマメを天ぷらや胡麻和え、バター炒め、サラダなどにして食べる「さやいんげん(軟莢種)」と、完熟したマメを煮豆や甘納豆、きんとんなどに利用する硬莢種とがあります。
さらに蔓性の「つるあり種」と、矮性で蔓が伸びない「つるなし種」にも区分され、また、莢の形状も「丸さや」から「平さや」までと多様です。品種としては数百種もあります。
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栽培のポイント
「いんげんまめ」を栽培するにあたっての基本条件および栽培のポイントはつぎのとおりです。なお作型は、品種によって異なる場合がありますので、タネ袋に記載されている内容をよく確認してください。
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気候区分
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作業
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1
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2
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3
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温暖地 |
種まき |
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植えつけ |
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収穫 |
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気候区分
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まきどき (春|秋)
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収穫時期 (春|秋)
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寒 地 |
05/上〜07/中 |
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07/上〜10/上 |
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寒冷地 |
04/下〜07/下 |
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06/下〜10/中 |
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温暖地 |
04/中〜08/上 |
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06/中〜10/下 |
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暖 地 |
04/上〜08/上 |
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06/上〜11/上 |
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ご注意
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発芽温度は15〜30℃、生育温度は10〜30℃なので、これを外れるときは、加温または遮熱をしてください。
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℃
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152025
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発芽適温
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20
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生育適温
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15-25
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栽培のポイント
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温和な気候を好み、寒暑ともに苦手です。10℃以下では成長が止まり、軽い霜でも枯死します。
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pH
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5.06.07.0
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土壌酸度
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5.5-6.8
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栽培のポイント
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強い酸性土壌ではかならず石灰を施し、よく耕してから栽培にとりかかってください。土性は軽い砂土から埴土まで選びませんが、水はけのよいことが必要です。
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年
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0 |
1 |
2 |
3 |
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5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
作付け間隔
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2-(3)
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栽培のポイント
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連作障害の出やすい野菜です。いちど栽培したところでは、少なくとも2年は栽培しないようにしてください。
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栽培のステップ
「いんげんまめ」を栽培するとき、種まきから収穫までの作業ステップは、およそつぎのようになります。ここでは、小さなホームガーデンを想定した一般的な方法を説明しています。
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ステップ
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内容
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種まき・育苗
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(1) 3号ポットにタネまき用土を入れ、タネを3〜4粒、間隔をあけて、人差し指1節くらいの深さにあけた穴にまきます。覆土をして、軽く手で押さえます。
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(2) たっぷりと水を与え、植えつけまで日当たりのよいところで育てます。
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畑の準備
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(1) 酸性土壌にやや弱いので、植えつけの2週間くらい前までに、1平方メートルあたり100gの苦土石灰を施し、よく耕します。
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(2) 畝の全面に1平方メートルあたり3kgの完熟堆肥と150gほどの有機配合肥料を施し、よく耕します。幅90センチ、高さ10センチほどの畝を立てます。
肥料とくに窒素分は少なめに施肥します。肥料が多いといわゆる「つるぼけ」を起こし、収穫量が減ってしまいます。
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植えつけ
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(1) 本葉が2枚に育ったころ、成長の遅れているものを間引いて、2本立てにします。
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(2) 本葉が4枚になったころ、条間45センチで、株間30センチに植え穴をあけ、根を傷めないように注意して、苗を植えつけます。8号鉢に1株、65センチのプランターなら2〜3株が植えられます。
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追肥 支柱立て
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(1) 高さが20センチくらいになったら、必要に応じて、有機配合肥料を株元にまいて土寄せします。
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(2) つるあり種は、蔓がよく伸びるので2メートルくらいの支柱を立てて誘引します。つるなし種は放任でもかまいませんが、支柱を立てたほうが倒れません。
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収穫
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(1) つるなし種は、開花後10〜15日ごろ、マメのふくらみが莢に現れてきたら収穫します。
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(2) つるあり種も同様ですが、つるなし種よりもマメのふくらみが大きくなっても食味がおちにくいようです。
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おもな病害虫
「いんげんまめ」には、アブラムシ類やハダニ類などの害虫、うどんこ病や褐斑病の病気が発生します。
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おもしろ百科
「いんげんまめ」の別名
「いんげんまめ」には、いろいろな別名があります。関西地方で「さんどまめ(三度豆)」と呼ばれることは紹介しましたが、そのほか若い莢を食べることから「さいとう(菜豆)」とも、また5月に収穫できるところから「ごがつささげ(五月大角豆)」とも呼ばれます。
「べにばないんげん」
「べにばないんげん(紅花隠元)」は、インゲンマメ属のなかでも種類が異なり、学名は Phaseolus coccineus。これもメキシコから中央アメリカが原産ですが、冷涼な高地でないと結実しないため、わが国では北海道から東北地方、長野県や岐阜県で栽培されています。「はなまめ(花豆)」とも呼ばれ、煮豆やあん、甘納豆などに用いられます。
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「いんげんまめ」のQ&A
Q1:「いんげんまめ」のつるなし種の蔓が伸びてきました。
A1:つるなし種でも、過繁茂(肥料過多、高温、日照不足等)で蔓が伸びる場合があり ます。長い蔓が出るようなら、早めに摘芯して、背丈が大きくならないようにします。
Q2:「いんげんまめ」のタネが発芽しません。
A2:「いんげんまめ」を直まきしたとき、発芽しないのにはいくつかの原因が考えられます。
(1) 発芽適温は20℃前後ですが、地温が15℃以下だとタネが腐り発芽しません。(早まきしたいときは、温室などでポット育苗し、本葉が4枚になったころ定植してください。)
(2) タネまき後に、水をやりすぎると、酸素欠乏になってタネが腐り発芽しません。
(3) タネまき前に、長時間水に漬けると、酸素欠乏などでタネが死んでしまうことがあります。
(4) 「いんげんまめ」は、地上にマメが持ち上がって初めて発芽します。そのため、鳥の餌食になり、結果的に発芽しないことになります。
Q3:「いんげんまめ」がかたくて、美味しくありません。
A3:「いんげんまめ」では、土壌の水分が不足すると莢がかたくなります。このため乾燥しないように、わらを敷いたり、水やりを欠かさないようにします。また、収穫時期が遅れても莢がかたくなり、美味しさが損なわれます。
Q4:「いんげんまめ」の実つきがよくありません。
A4:「いんげんまめ」は、チッ素肥料が多すぎると枝や葉ばかりが繁り、いわゆる「つるボケ」という現象になり、実つきが悪くなります。また、30℃以上の高温が続いたときも、落花が多くなり、結果的に実つきが悪くなります。
Q5:「いんげんまめ」の葉縁が縮んできました。
Q5:いんげんまめの葉が縮んで奇形になったり、葉が表面が濃淡のモザイク状になるのは、モザイク病(ウイルス病)と考えられます。これは薬剤では防除できないので、病株は他に伝染しないように、畑から持ち出して処分します。媒介するアブラムシは、光るものを嫌う習性がありますので、シルバーマルチをすると効果があります。
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写真提供: 「ボタニックガーデン」 イラスト: 「ころぽっくる」 by lemさん
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