いちご(苺)


Strawberry     プロフィール

  バラ科オランダイチゴ属の常緑多年草で、学名は Fragaria grandiflora。
  「バージニアいちご」と「チリいちご」の自然交雑種をもとに改良された園芸品種です。わが国へは江戸時代の末にオランダ人によって伝えられ、「オランダいちご」と呼ばれました。根元からランナーを長く伸ばして繁殖します。4月から5月ごろ白い花を咲かせ、果実は赤く熟します。
  系統・品種と用途

  「いちご」には、一般に流通していて春から初夏に収穫する「一季なり種」と、「ワイルドストロベリー(Fragaria vesca)」から改良された春と秋に収穫する「四季なり種」とがあります。
  「一季なり種」は、ふつう、ランナーといわれるツルの先にできる子苗を増やし、増殖(栄養繁殖)します。最近では、種子繁殖型の「いちご」も新しい品種として登場しています。これには、2008年に千葉県が開発した「千葉F−1号」、三重県、香川県、千葉県と九州沖縄農業研究センターが共同で開発した「よつぼし」があります。
  栽培のポイント

  「いちご」を栽培するにあたっての基本条件および栽培のポイントはつぎのとおりです。なおここでは、ふつうの「栄養繁殖」型の栽培を記載しています。

気候区分

作業

1

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11

12

温暖地

育苗

定植

収穫


気候区分

定植時期 (春|秋)

収穫時期 (春|秋)
寒 地   10/中〜10/下   05/中〜06/下
寒冷地   10/中〜10/下   05/上〜06/中
温暖地   10/中〜11/上   04/下〜06/上
暖 地   10/中〜11/上   04/中〜05/下

ご注意

  発芽温度は15〜30℃、生育温度は10〜23℃なので、これを外れるときは、加温または遮熱をしてください。

 


152025

発芽適温

20-25

生育適温

17-20

栽培のポイント

  冷涼な気候を好み、夏の暑さや乾燥に弱いものの、雪の下でも越冬します。寒地ではポリマルチを掛けて保温したほうがよいでしょう。

 

pH

5.06.07.0

土壌酸度

5.5-6.8

栽培のポイント

  中性に近い、弱酸性を好みます。強い酸性土壌ではかならず石灰を施し、よく耕してから栽培にとりかかってください。

 


0

1

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6

7

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9

10

作付け間隔

2-(3)


栽培のポイント

  連作障害がでますので、いちど栽培したところでは、少なくとも2年は栽培しないようにしてください。
  栽培のステップ

  「いちご」を栽培するとき、育苗から収穫までの作業ステップは、およそつぎのようになります。ここでは、小さなホームガーデンを想定した一般的な方法を説明しています。

 

ステップ

内容

育苗

(1) 5月から6月ごろ、親株から伸びてくるランナーが込みあわないよう誘引して、苗作りをします。1節目の子苗(太郎苗)は病害に感染している危険性があるので、2節目以降の子苗(次郎苗・三郎苗)を「ランナー挿し」します。

Strawbery

Strawbery


(2) 3.5号ポットに培養土を入れ、子苗を受けて、株が浮き上がらないようにランナーを曲げた針金などで固定し、育苗します。20日ほどで根が活着したら、ランナーを切り離します。このとき、親株に近いランナーは2〜3センチほどに切り、他方は短く切ります。

仮植え

(1) 次項の「畑の準備」に準じて、苗床をつくります。「いちご」の根は、肥料焼けを起こしやすいので、元肥は仮植えの2週間前までに行っておきます。

Strawbery

Strawbery


(2) 苗床に、小苗を株間15センチほどで仮植えします。

(3) 高温期は、炭そ病や萎黄病が多いので殺菌剤を定期的に散布するとともに、遮熱のために寒冷紗を掛けるようにします。

畑の準備

(1) 酸性土壌に弱いので、植えつけの2週間くらい前までに、1平方メートルあたり120〜150gの苦土石灰を施し、よく耕します。

Strawbery


(2) 畝全体に、1平方メートルあたり2〜3kgの完熟堆肥と100gほどの有機配合肥料を施し、よく耕します。幅90センチ、高さ10センチほどの畝を立てます。なお、肥料が直接触れると根が傷んでしまうので、注意してください。

植えつけ

(1) 初めて「いちご」を栽培するときは、市販の苗を購入し、ウイルスフリー苗を選ぶようにします。

Strawbery

Strawbery

Strawbery


(2) 条間40センチ、株間30〜40センチで苗を定植します。

(3) クラウン(葉柄の基部)がかくれないように、浅植えしてください。植えつけの後にたっぷりと水を与えます。また、子株の植えつけの方向としては、花房が親株のランナーの反対側に出るので、花房が通路側になるようにします。

(4) 6〜7号鉢には1株、65センチのプランターなら2〜3株が植えられます。

追肥・管理

(1) 根が活着して盛んに生育をはじめたころに、必要に応じて、条間に有機配合肥料を追肥して中耕します。

Strawberry

Strawberry

Strawberry

Strawberry


(2) 11月の終わりころ、越冬のために、季節風の強く吹くところでは、風上に風除けを設置します。

(3) 2月から3月のはじめ、春先になり、新葉が少し伸びてきたころに、黒マルチとビニールトンネルを掛けます。

(4) 新葉が伸びたら、越冬時の老化葉は取り除きます。

(5) 春の追肥は2〜3月と5月の2回、行います。

収穫

(1) 果実が肥大するころに発生するランナーは、早めに取り除きます。

Strawberry

Strawberry

Strawberry


(2) 収穫するのは、朝もぎが一番です。

(3) 枯れた下葉をこまめに取り除いて風通しをよくします。また腐った果実や変形果は早めに取り除いてください。
  おもな病害虫

  「いちご」には、ハダニ類やなめくじ、ヨトウムシ類などの害虫、うどんこ病や灰色かび病などの病気が発生します。
  「いちご」のQ&A

  Q1:「いちご」の越冬はどうするの。
  A1:「いちご」は、一定の寒さに遭うまで休眠する性質があります。そしてそれを過ぎないと、勢いよく成長し始めません。したがって、霜柱のひどくない場所で、ある程度の寒さが当たるようにして越冬させます。春先の2月ごろになり、新葉が少し伸び始めたころ、マルチやトンネルを掛けるようにします。

  Q2:「いちご」の古い葉は取り除くの。
  A2:「いちご」の葉は、越冬の時期になると、古い葉が目立つようになります。暖かくなって新しい葉が伸びてきたら、古い葉は取り除くようにします。そのままにすると、病虫害の原因にもなり、新葉の展開にも影響します。

  Q3:「いちご」の実が甘くありません。
  A3:「いちご」の実を甘くするには、いくつかの方法があります。

(1) 甘くなる品種を選ぶこと。
甘くなる品種でないと、甘くはなりません。市販されている苗では、「紅ほっぺ」や「夏姫」、「カレンベリー」、「あまおう」、「女峰」、「章姫」、「アイベリー」、「よつぼし」、「東京おひさまベリー」などを選ぶようにします。
(2) 摘花すること。
花房についた花をすべて咲かせ、実をつけさせると甘くはなりません。ひとつの花房には、3〜5輪を残し、あとは摘み取って養分を集中させるようにします。
(3) 適した肥料を与えること。
チッ素成分の多い肥料を与えると、「いちご」の花が咲かなかったり、果実自体がならない原因のひとつのになります。したがって「いちご」を甘くするには、リン酸成分の多い肥料やいちご栽培専用の肥料を用法・容量を守って使用することが大切です。
(4) 日当たりの良い場所でそだてること。
日照時間が長く日当たりの良い場所で育てるのが基本です。日照時間が長ければ株も丈夫に生育し、花つきもよく結実、甘い「いちご」となります。
(5) 水分を控えること。
「いちご」は結実するまでは十分に水を与えて育てるのが基本ですが、冬期に水を控えめに与えると糖度が高まるといわれています。
(6) ハウス・トンネル栽培をする。
ハウスやトンネル栽培をすると、露地栽培で育てるよりも甘くなるようです。
  写真提供: 「ボタニックガーデン」  イラスト: 「ころぽっくる」 by lemさん
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