なす(茄子)


    プロフィール

  ナス科ナス属の多年草で、学名は Solanum melongena。
  インド東部の東ガーツ山脈が原産と考えられています。わが国へは、奈良時代に中国から渡来しました。したがって名前も、漢名の「茄」、「茄子」に由来しています。いろいろな果形がありますが、ふつうには「中長なす」や「長なす」です。生育期は6月から9月ごろ、ちょうど原産地の雨季にあたります。
  系統・品種と用途

  わが国には、古くからその地方で守り育てられてきた70品種ほどの在来品種があります。また、現在栽培されているのは100品種以上ありますが、ほとんどは病気に強く、料理のしやすい「卵形なす」から「中長なす」です。果形によって、つぎのように分類されます。
  「賀茂なす」のような「丸形なす」、一般的な「卵形なす」、それよりやや面長の「長卵形なす」、非常に長い「長なす」やさらに長い「大長なす」です。
  栽培のポイント

  「なす」を栽培するにあたっての基本条件および栽培のポイントはつぎのとおりです。なお作型は、品種によって異なる場合がありますので、タネ袋に記載されている内容をよく確認してください。

気候区分

作業

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12
温暖地
種まき

植えつけ

収穫

気候区分

まきどき (春|秋)

収穫時期 (春|秋)
寒 地 03/上〜04/下   07/上〜10/上  
寒冷地 02/下〜04/中   06/下〜10/中  
温暖地 02/中〜04/上   06/中〜10/下  
暖 地 02/上〜03/下   06/下〜11/上  

ご注意

  発芽温度は15〜35℃、生育温度は17〜33℃なので、これを外れるときは、加温または遮熱をしてください。

 


152025

発芽適温

20-25

生育適温

22-30

栽培のポイント

  寒さには非常に弱いので、最低気温が15℃を下回らなくなってから植えつけます。さらにマルチをして地温をあげた方が生育がよくなります。

 

pH

5.06.07.0

土壌酸度

6.0-7.3

栽培のポイント

  酸性土壌ではかならず石灰を施し、よく耕してから栽培にとりかかってください。

 


0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

作付け間隔

5-(7)


栽培のポイント

  連作障害の出やすい野菜です。いちど栽培したところでは、少なくとも5年は栽培しないようにしてください。
  栽培のステップ

  「なす」を栽培するとき、種まきから収穫までの作業ステップは、およそつぎのようになります。ここでは、小さなホームガーデンを想定した一般的な方法を説明しています。

 

ステップ

内容

種まき・育苗

(1) 育苗箱や連結ポットにタネまき用土を入れ、タネをまきます。連結ポットのときは2〜3粒ずつまきます。覆土をして軽く手で押さえます。温度は25〜30℃に保ちます。








(2) 本葉1枚のころ、4号ポットに植え替えます。本葉が8〜9枚になるまで、このまま育てます。

畑の準備

(1) 酸性土壌にやや弱いので、植えつけの2週間くらい前までに、1平方メートルあたり150gの苦土石灰を施し、よく耕します。




(2) 畝の中心に20〜30センチの深さに溝を掘るか、全面に1平方メートルあたり3kgの完熟堆肥と200gほどの有機配合肥料を施し、よく耕します。幅90センチ、高さ10センチほどの畝にします。

(3) 穴のない黒色マルチフィルムで畝を被い、地温を上げておきます。

植えつけ
仮支柱立て

(1) 本葉が8〜9枚になり、一番花が咲き始めたころ、条間45センチくらいに、60センチの間隔でちどりに苗を植えつけます。8〜10号深鉢に1株、65センチの深型プランターなら2株が植えられます。






(2) 仮支柱を斜めに立て、茎が太るのに支障がないよう、8の字にしばって誘引します。

整枝
支柱立て

(1) 高さが40〜50センチに成長したら、主枝と一番花のすぐ下のわき芽2本の3本仕立てに整枝します。そりより下のわき芽はすべて摘み取ります。






(2) 大きく成長するので、本支柱を立てて、枝をひもで8の字にしばって誘引します。

収穫・追肥

(1) 最初の果実(一番果)は、小さいうちに収穫し、株の負担を軽減します。








(2) 二番目以降の果実は、開花後20〜25日で収穫します。

(3) 収穫が始まったら、2週間に1度の間隔で有機配合肥料や液肥を追肥していきます。「なすのお礼肥」という言葉もあるとおり、「なす」には多肥が必要です。花が小さくなったり、葉の色が悪くなったりしたら、肥料切れのサインです。

更新剪定

(1) 「秋なす」をつくるには、7月下旬から8月上旬ごろに、主枝と側枝を3分の2から2分の1に切り戻します。



  おもな病害虫

  「なす」には病害虫が多く、無農薬栽培が難しい野菜です。アブラムシ類やハダニ類、テントウムシダマシ類などの害虫、半枯れ病や黒枯れ病などの病気も発生します。
    おもしろ百科

  「ひらなす(平茄子)」

  アフリカが原産です。栽培されている「なす」の近縁で、高さは1メートルほどになります。
  丈夫なので「なす」の台木として利用されたり、観賞用として栽培されます。果実は白色から黄色、オレンジ色、赤色へと変化します。
  「なす」のQ&A

  Q1:「なす」の果実が石のようにかたい。
  A1:このような状態を「石なす」といいます。これは、受精不完全で、果実のなかに種子ができないまま着果するため堅くなったものです。原因としては、チッ素過多による花の生育の不良や水分・肥料不足、日照不足、開花前後の低温(10℃以下)による受精不良などが考えられます。

  Q2:「なす」の果実に茶褐色のかさぶたが。
  A2:「なす」の果実の表皮に、茶褐色のかさぶたができるのは、いくつかの原因が考えられます。ひとつは、幼果が強風などで葉とこすれあい、その擦り傷が茶色くかさぶた状になったことです。また、チャノホコリダニの被害によっても、表皮にかさぶた状の症状ができることがあります。このときは、殺ダニ剤を散布するようにします。

  Q3:「なす」の果実の色が薄い。
  A3:このような状態を「ボケナス」といいます。これは、葉の下で日陰になって、太陽の光が当たらないところで発生します。そのほか、着果過多や強摘葉、高温乾燥、成り疲れ、根の老化などによっても助長されます。

  Q4:「なす」の実が苦いのはなぜ起こる。
  A4:「なす」の果実が苦いのは、「クロロゲン酸」と呼ばれるアクが強いからです。これは栄養状態がよくないときに起こります。ふつうは7月下旬くらいまでに剪定して、一度休ませることが必要ですが、これをしないと実の付きが悪くなったり、「アク」が強くなったりします。ただこの「アク」は、熱を加えると甘味アミノ酸が生成されるため、苦味がなくなります。

  Q5:「なす」の落花が多く、あまり果実ができません。
  A5:「なす」は比較的、落花の多い作物です。とくに肥料不足などで株が弱ると、落花が多くなります。あまりにも落花数が多かったり、ほとんど果実がつかないときは、雌しべが雄しべより短くなってしまう「短花柱花(たんかちゅうか)」になっていることが考えられます。「短花柱花」では、花は咲いても受粉や受精がうまく行われないため、落花してしまいます。水やりを適切に行い、早めに追肥するのが対策となります。

  Q6:「なす」の裂果はなぜ起こる。
  A6:「なす」の果実が、収穫前に割れてしまうのは、大雨や日照りなど、湿度・温度の差が大きくなることが原因です。天候による影響が大きいので、露地栽培では完全に防ぐことは困難です。

  Q7:「なす」を秋にも収穫するには。
  A7:「秋なす」をつくるには、7月下旬から8月上旬に、主枝と側枝を3分の2から2分の1に切り戻します。このとき土も硬くなっているので、株元の周囲を、根を切らないように耕して、追肥を施します。

  写真提供: 「ボタニックガーデン」  イラスト: 「ころぽっくる」 by lemさん
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