タネについて


  1.タネの自給率

  わが国の野菜の自給率は80%ほどだと言われますが、その野菜のタネの自給率は、今では10%を切っています。逆に言うと、野菜のタネの90%以上が海外で生産されたということです。その理由は、良質なタネを合理的な価格で安定的に供給するためであり、また多様な品種を確保し、気候変動などのリスクにも対応するためです。
  この自給率の低下は、昭和40年ごろから固定種から交配種(F1品種)へと変わるとともに、その交配種のタネを海外で生産することで、徐々に進んできました。


「えんどう」のほ場

「にんじん」のほ場

「はつかだいこん」のほ場

「コリアンダー」のほ場

 
  2023年の統計を見ると、野菜のタネの輸入割合は、数量ベースで見ると1位はアメリカで27.4%となっています。次いでイタリア14.5%、デンマーク14.3%、チリ12.9%、ニュージーランド10.0%と続き、(これで8割)中国は8.0%です。

  なぜ国内ではなく、F1品種が海外生産になったかというと、(1) 採種に必要な安定した乾燥した気候の場所が少ないこと。(2) 採種のための大規模な土地を確保することが難しいこと。(3) 採種の採算性悪化や後継者不足により採種農家が減少していること。などの理由があります。

  そのため経済安全保障の観点で、地域の伝統的な野菜を採種し、地域で育て、タネの自給率を上げるという原点回帰も叫ばれています。

※写真左は、いずれもアメリカ・アイダホ州にて撮影した採種ほ場。
  2.固定種と交配種(F1品種)

  昭和40年ごろから、地方から都市部への人口移動が活発化し、食料の安定供給と生産性の向上を求める社会のニーズに応えるため、農業の大規模化と効率化が進められました。この流れの中で、固定種に替わって交配種が急速に普及していきました。

固定種のタネ

  (1) 固定種とは

  英語では「Open Pollinated Variety」(自然受粉品種)や「Pure Bred Variet」と表現されます。これは、自家採種で同じ形質が受け継がれる品種を指し、自然受粉で作られる種を意味します。英語の頭文字をとって「P」と略されます。
○メリットとしては、自家採種もできること。その土地の環境に適した作物が育つようになる、育てやすくなるなど。また、伝統の味、旬の味覚が味わえることも。
○デメリットとしては、遺伝的多様性という特徴も有しているため、同じ品種内でも生育や形状にバラつきがでることがあり、収量時期や品質も安定しているとはいえないこと。また、自家採種するとなると、形質を維持するための母本選抜や交雑しにくい採種ほ場の確保などが必要になります。


交配種のタネ

  (2) 交配種(F1品種)とは

  英語は「First Filial Generation」(雑種第一代)です。これは、異なる品種を交配させてできた一代目の雑種を指し、英語の頭文字をとって「F1」あるいは「F」と略されます。タネ袋には、「F1」や「一代交配」、「○○交配」などと表記されています。

○異なる品種を交配させると、その第一代の子は、両親の形質のうち優性だけが現れ、劣性は陰に隠れます。雑種強勢の効果です。
○メリットは、交配種はあらゆる形質でこの優性遺伝子だけが発現するため、耐病性があったり、生育も旺盛、同じ形によく揃います。また多収であったり、収穫時期が揃うこともあります。
○デメリットは、毎回、タネを購入しなければならないことや、固定種に比べて割高なこと。交配種からタネを採ると、優性形質3に対し、1の割合で隠れていた劣性形質が現れます。あらゆる形質で劣性遺伝子が分離して顔を出すため、バラバラな野菜となってしまいます。
(3) どの品種を選ぶか

  家庭菜園では、どのような品種を選ぶかが問題となりますが、はっきり言って定まった基準はありません。ただあるとすれば、適地適作、土地に適した品種を選ぶこと、ということです。
  例えば「たまねぎ」でいえば、北海道の品種を本州で栽培すると、肥大開始が遅れ、梅雨の長雨で腐りやすくなり、抽台(とう立ち)も頻発するので使用できません。
  一番いいのは、近くの家庭菜園や農家の方に伺って、まずは選んでみるのがいいのかもしれません。そして、いろいろ試した後の経験値で、どの品種がその土地に合っているのかが分かってくると思います。
  3.異株について

  アブラナ科の野菜を栽培していると、よく異株(異種株、変異株)がでることがあります。タネの採種ほ場においても、異種株等を開花前に除去していますが、すべて採りきることができないためです。
  アブラナ科の植物には、受粉に関して、自家不和合性(同じ個体の花粉が、同じ個体の雌しべで受精するのを防ぐ仕組み)があります。そのため採種に対しては、他の品種と交雑しないよう、隔離栽培が必要です。その隔離距離は1km以上(最小隔離距離800m)とされています。それでも交雑の可能性が残ります。そのため種苗法では、品種の純度を95%以上としています。
  写真提供: 「ボタニックガーデン」
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