種まき−3


  1.はじめに(タネまきから育苗へ)

  「育苗栽培」は、タネを一旦、育苗箱や連結ポット、ポリポットに蒔き、育苗してから畑の畝に移植します。「直まき」よりも作業効率がよく、生育が揃うためによい苗ができるようになります。
  ただ、早春の「育苗」では外気温が低いため、保温や加温が必要になり、夏の「育苗」では外気温が高過ぎるため、よしずや遮光ネットなどで直射日光を遮るなどの対策が必要となります。
  2.育苗箱での苗作り

  「ねぎ」や「たまねぎ」は、育苗箱にタネを蒔いて、そのまま育苗して定植苗にします。
  「ねぎ」や「たまねぎ」は、以前は苗床をつくり、タネを蒔いて育苗する、地床育苗が主流でした。ただ、栽培場所が余計に必要なことなどや、省力化のため、育苗箱での栽培に変わってきています。

        

たまねぎ(幼苗)

たまねぎ(定植苗)

葉ねぎ
  (a) 育苗箱にタネまき用土を入れ、板きれなどで幅1センチ、深さ1センチほどの蒔き溝をつけます。(育苗箱は市販されている51型が使いやすいでしょう。内寸で 477mm×326mm×76mm あり、これだと4条にして、100株くらいが育成できます。)
(b) 蒔き溝にタネを1〜2センチ間隔で蒔き、タネの2〜3倍の厚さになるように覆土をして、手で軽く転圧します。
(c) 静かに水やりをして、発芽するまで、乾燥を防ぐために新聞紙などで被っておきます。
(d) 発芽したらよく日光に当て、草丈が6〜7センチのころに混み合うところを間引き、株間に追肥を与えます。(苗に大小はできますが、間引かなくても大丈夫です。追肥にはネギ専用肥料がお勧めです。)
(e) 草丈が20〜25センチになるまで育苗します。

○ただ「葉ねぎ」の場合は、ポリポットにタネを蒔き、そのまま育苗して定植してもいいようです。
  3.連結ポットやセルトレーでの苗作り

  連結ポットやセルトレーにタネを蒔き、育苗する方法には、そのまま定植苗まで育てるパターンと、一旦ポリポットに植え替えて育苗し、大きな定植苗にするパターンとがあります。

  連結ポットにはいろいろなサイズと穴数があります。どれを使うかは悩むところですが、16穴タイプ(285mm×285mm×55mm) を選ぶと、メリットが大きいと思います。(タイプの穴寸法は、62mm×62mm×55mm)

  セルトレー(プラグトレー)は、連結ポットよりも穴数が多く、ふつう野菜用には128穴タイプ(545mm×280mm×38mm)が使用されます。セルトレーでは、「キャベツ」や「ケール」、「こまつな」、「コリアンダー」、「バジル」、「ほうれんそう」、「みずな」、「レタス」などの葉菜類や、「かぶ」や「はつかだいこん」などの根菜類、「ブロッコリー」などの果菜類が育てられます。
  ただ、セルトレーでの栽培は、育苗中に潅水や温度などの徹底した管理が必要なことや、若苗定植(苗は若いうちに、本葉が3〜4枚になったら植付けの目安)、定植直後の植え傷み対策に、不織布などで被うなどの管理が必要です。

  従って、連結ポットかセルトレーかという選択では、大規模な栽培をしないかぎり、定植後の管理が容易な連結ポットによる栽培がお勧めだと思います。

        



レタス(幼苗)

レタス(定植苗)
  (1) 「連結ポット」で育苗

○「キャベツ」や「ケール」、「コリアンダー」、「はくさい」、「バジル」、「ブロッコリー」、「レタス」などは、連結ポットで育苗し、そのまま定植苗にします。

(a) 連結ポットにタネまき用土を入れ、板きれなどですりきります。じょうろなどで静かに水をやります。(こうすると用土が少し締まって、水代(みずしろ)ができます。)
(b) タネを数粒ずつ蒔き、タネが隠れるくらいの覆土を掛けます。
(c) 「はくさい」や「コリアンダー」、「レタス」は本葉が4〜5枚になるまで、「キャベツ」や「ブロッコリー」、「ケール」、「バジル」などは本葉が5〜6枚になるまで育苗します。
(d) 「レタス」や「コリアンダー」では、連結ポット1個分で、3メートルの畝の半分を埋めることができます。また「キャベツ」や「はくさい」では、ほぼ1畝分になります。

トマト(幼苗)

トマト(3号ポット)

トマト(3.5号ポット)
  (2) 「連結ポット」から「ポリポット」に植え替えて育苗

○「トマト」や「なす」、「ピーマン」などは連結ポットにタネを蒔き、ある程度育苗してからポリポットに植え替え、定植苗になるまで育苗します。

(a) 「トマト」や「なす」、「ピーマン」などの場合は、連結ポットにタネまき用土を入れ、タネを2〜3粒ずつ蒔きます。覆土を掛けて、必要があれば保温します。
(b) 本葉が1〜2枚のころ3号ポットに移植し、本葉が5〜6枚になるまで育苗します。
(c) その後3.5〜4号ポットに植え替えて、一番花が咲くくらいまで育苗するようにします。

○ここで大切なのは、苗を徒長させないために行う「鉢ずらし」です。できるだけ直射日光を当てるように、また風通しを良くするように、成長するに従って鉢をずらし、ポットとポットの間隔を空けるようにします。



パンジー(幼苗)

パンジー(3号ポット)

  (3) 「連結ポット」から「ポリポット」に植え替えて育苗−2

○花のタネでも、1〜2ミリの小型種子、1ミリ未満の微細種子の場合は、連結ポットからポリポットに植え替えて育苗します。
○また「きんぎょそう」や「ひなげし」、「ペチュニア」などの微細種子の場合は、水苔ピートが原料のピートバンを利用することもあります。

(a) 連結ポットにタネまき用土(細粒)を入れ、板きれなどですりきります。じょうろなどで静かに水をやります。(こうすると用土が少し締まって、水代(みずしろ)ができます。)
(b) タネを数粒ずつ蒔き、小型種子の場合は目の細かいふるいで、タネが隠れるくらいの覆土をかけるか、微細粒子の場合は覆土を掛けません。
(c) 水やりは、細かいじょうろで静かに行うか、底面給水を行って、タネが用土に潜らないようにします。
(d) 発芽したら、混み合ったところは間引き、1〜2株にします。ある程度の大きさになるまで育苗します。
(e) 植え替えの大きさになったら、小さな移植ごてやフォークなどを使って、3号ポットに植え替えます。フォークだと隙間かあるので、根が傷みにくいです。



きゅうり(幼苗)

きゅうり(定植苗)
  (4) 「ポリポット」で育苗

○ふつう3号(φ9cm)〜3.5号(φ10.5cm)ポリポットにタネを蒔き、そのまま定植苗になるまで育苗します。

(a) ポリポットにタネまき用土を入れます。このとき1センチほどの水代(みずしろ)を残しておきます。
(b) タネを数粒まき、覆土をして、静かに水やりをします。タネに向きがあるものは注意して蒔くようにします。
(c) 生育するのに従って、適宜、間引きをして育苗します。
(d) 苗を徒長させないために、成長するに従って鉢をずらし、ポットとポットの間隔を空けるようにします。

○ここで大切になるのは、ポリポットを直接地面に置かず、ポリポットトレーなどに入れて育苗することです。ポリポットを地面に置き、放って置くと根が地面に伸び、定植などで移動させようとすると根が切れてしまいます。
○野菜のタネでは、「いんげんまめ」や「えんどう」、「そらまめ」、「えだまめ」、「らっかせい」などのマメ類、「かぼちゃ」や「きゅうり」、「すいか」、「ズッキーニ」、「にがうり」、「メロン」などのウリ科の作物、イネ科の「とうもろこし」などが適合します。
○花のタネでは、「あさがお」や「きんれんか」、「コスモス」、「ひまわり」、「ひゃくにちそう」、「ほうせんか」、「マリーゴールド」、「よるがお」などが適合します。
  4.水やりについて

  播種後すぐに行う水やりは、用土の表面を濡らす程度にするのが正しいやり方です。2日目には、底までしみ込むように十分に水やりをします。
  また播種後すぐから発芽してすぐの初期生育までは、冷たい水ではなく、くみ置きした水などを与えるようにしてください。

水をやり時間も、生育初期は気温が上がってきた頃に、それ以降は苗の成長に合わせて、早朝に、または遅くしてください。酷暑の時期には、2回の潅水(水やり)が必要になることもあります。
  5.育苗中の保温・加温や防虫対策

  育苗中に保温・加温の必要となるのは、春先に蒔く「トマト」や「なす」、ピーマン」、「とうがらし」などです。
  ふつう植付け時期が5月から6月ごろになりますので、そのタネ蒔きの時期は3月ごろになります。この時期は早春で、まだ気温も低いことから、発芽や育苗に保温や加温が必要になります。

        

加温ハウス&電熱温床

保温トンネル&電熱ヒーター

保温カバー&電熱ヒーター

室内&電熱ヒーター

加温ハウス&電熱ヒーター
  (1) 加温ハウス&電熱温床

○最も理想的なのは、農業用ハウスをボイラーで保温・加温して、温床を電熱ヒーターで加温する方法です。直射日光を浴びることができ、タネまきから育苗までの全ての期間において利用することができます。
○ただ、設置費用やランニングコストが高いため、個人ではなかなか難しい方法です。

  (2) 保温トンネル&電熱ヒーター

○南向きの室内で、保温トンネルと電熱ヒーターを使用してタネまきから育苗を行う方法です。
○早春なら直射日光が部屋の奥まで届きます。必要なら室内で暖房をして加温するか、夜間にはトンネルの上に毛布などを掛けて保温します。
  (3) 保温カバー&電熱ヒーター

○「室外のベランダや軒下で、ポリポットトレーに保温カバーをして電熱ヒーターを使用する方法です。「えんどう」などの春蒔きで、比較的低温でも発芽する作物に利用できます。
○夜間にはトンネルの上に毛布などを掛けて保温します。
  (4) 室内&電熱ヒーター

○マンションなど比較的保温性のよい室内で、電熱ヒーターを使用する方法です。南向きの採光がないところでは、LED植物育成ライトが欠かせません。
  (5) 加温ハウス&電熱ヒーター

○戸建ての住宅で、小型のビニールハウスと暖房用ヒーター、電熱ヒーターを使用する方法です。基本的にLED植物育成ライトを利用して採光を補います。
○暖房用ヒーターには、農業用サーモスタットを利用して、できるだけ温度を安定するようにします。


育苗中の幼苗

防虫トンネル

  (6) 育苗中の防虫対策

○「キャベツ」や「はくさい」などアブラナ科の作物には、育苗中にモンシロチョウやコナガなどの害虫が訪れ、卵を産み付けます。
○これを防止するために、不織布や防虫ネットなどで防虫トンネルを作るのが賢明です。
○防虫トンネルは、3号ポット用24穴のポリポットトレー(490mm×330mm×80mm)が3個入る程度のものが利用しやすいです。内寸1170mm×50mmで枠組みを作り、そこに1メートルに切断したφ5.5mmのグラスファイバーポールを、30センチくらいの間隔で穴を明け、アーチ型に差し込みます。不織布や防虫ネットで被えば完成です。
  写真提供: 「ボタニックガーデン」
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