だいこん(大根)


    プロフィール

  アブラナ科ダイコン属の一年草で、学名は Raphanus sativus var. longipinnatus。
  中央アジアから地中海沿岸にかけてが原産です。すでに古代エジプトでは栽培が行われていました。わが国へは、縄文から弥生時代に渡来したものといわれます。3月から4月ごろ、白色または薄紫色の4弁花を咲かせます。肥大した根茎は、春の七草のひとつで、古くは「すずしろ(清白)」と呼ばれました。
  系統・品種と用途

  「だいこん」は、古くから栽培され、数多くの地方品種も生まれてきました。根のかたちも丸いものから、細長いものまであります。生態的分類からは、大きく3群に分類できます。低温に敏感で抽苔が早いので、夏から秋に栽培する「秋だいこん群」、低温に鈍感で抽苔しにくいので、秋から春に栽培する「春だいこん群」、それに低温に非常に敏感で抽苔が早いので、夏に栽培する「夏だいこん群」です。
  栽培のポイント

  「だいこん」を栽培するにあたっての基本条件および栽培のポイントはつぎのとおりです。なお作型は、品種によって異なる場合がありますので、タネ袋に記載されている内容をよく確認してください。

気候区分

作業

1

2

3

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10

11

12

温暖地

種まき

植えつけ

収穫

気候区分

まきどき (春|秋)

収穫時期 (春|秋)
寒 地 04/下〜05/下 07/下〜08/中 06/下〜08/上 09/下〜10/下
寒冷地 04/中〜05/中 08/上〜08/下 06/中〜07/下 10/上〜11/下
温暖地 04/上〜05/上 08/中〜09/上 06/上〜07/中 10/中〜12/中
暖 地 03/下〜04/中 08/下〜09/中 05/下〜06/下 10/下〜12/下

ご注意

  発芽温度は10〜40℃、生育温度は10〜25℃なので、これを外れるときは、加温または遮熱をしてください。

 


152025

発芽適温

15-35

生育適温

15-20

栽培のポイント

  冷涼な気候を好み、耐寒性があります。また暑さにはやや弱い性質です。

 

pH

5.06.07.0

土壌酸度

5.8-6.8

栽培のポイント

  中性に近い弱酸性を好みます。強い酸性土壌ではかならず石灰を施し、よく耕してから栽培にとりかかってください。

 


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1

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8

9

10

作付け間隔

1-(2)


栽培のポイント

  連作障害がでますので、いちど栽培したところでは、少なくとも1年は栽培しないようにしてください。
  栽培のステップ

  「だいこん」を栽培するとき、種まきから収穫までの作業ステップは、およそつぎのようになります。ここでは、小さなホームガーデンを想定した一般的な方法を説明しています。

 

ステップ

内容

畑の準備

(1) 酸性土壌に弱いので、植えつけの2週間くらい前までに、1平方メートルあたり100gの苦土石灰を施し、よく耕します。

(2) 畝全体を30〜35センチの深さによく耕し、1平方メートルあたり2kgの完熟堆肥と80〜100gの有機配合肥料を施して混ぜ込みます。幅90センチ、高さ10センチほどの畝を立てます。

種まき

(1) 畝の表面を木ぎれなどで均し、条間45センチに株間25〜30センチで、深さ1センチほどのまき穴をつけます。






(2) 1つのまき穴に、重ならないようにタネを4〜5粒まきます。1センチほど覆土を掛けて軽く転圧し、たっぷりと水を与えます。

(3) 乾燥と雑草が生えるのを抑えるために、まき穴のうえに腐葉土や籾殻をまいておきます。

間引き

(1) 本葉が1〜2枚でたころに、3本に間引きます。間引きのときには、子葉のかたちが良いものを残します。








(2) 本葉が3〜4枚のころに、2本に間引きます。

(3) 本葉が5〜6枚のころに、間引いて1本立ちにします。間引いた株は、間引き菜として利用してください。

追肥

(1) 2回目の間引きの後に、必要に応じて、畝の両側に有機配合肥料を施し、土寄せします。








(2) 3回目の間引きの後に、必要に応じて、畝の両側に有機配合肥料を施し、土寄せします。

(3) アブラムシやコナガなどの害虫がよくつきますので、防除を怠らないようにします。
  ただし、アブラナ科の植物なので、スミチオン系の殺虫剤を散布すると薬害がでます。

収穫

(1) 根の直径が7センチくらいになり、外側の葉が垂れるようになったら収穫の適期です。収穫が遅れると、すが入ります。

Japanese radish

Japanese radish

(2) 葉も栄養価が高いので、緑黄色野菜として利用してください。
  おもな病害虫

  「だいこん」には、アブラムシが大敵です。コナガやヨトウムシなどにも注意が必要です。
  「だいこん」のQ&A

  Q1:「だいこん」のどの株を間引く。
  A1:「だいこん」はふつう、一か所に4〜5粒まきます。これを本葉が1〜2枚でたころに、3本に間引きます。このとき、できるだけ葉の左右が揃ったものを残し、小さすぎるものや大きすぎるものも間引きします。異常に大きすぎるのは、早いうちに又根になったことが多いので注意が必要です。続いて本葉が3〜4枚のころに、2本に間引きます。最後に本葉が5〜6枚のころに、間引いて1本立ちにします。

  Q2:「だいこん」が曲がったり又根になります。どのような原因が。
  A2:「だいこん」は発芽してから根が下に伸び、30日くらい過ぎると徐々に太り始めます。このあと次第にだいこんが地上にも伸びてきて、およそ60〜70日で収穫期となります。「だいこん」が曲がったり又根になる原因としては、次のようなことが考えられます。
(1) 石や固形有機物、施肥ムラ、排水不良、耕耘不良、うねの高さ不足などで、根の伸びが妨げられた。
(2) 3年以上前の古い種を蒔いた。
(3) 土壌害虫(根腐れ線虫など)が生育初期に根を食害し、変形した。
(4) 蒔いたタネの間隔が近いと、葉が干渉して軸が曲がった。(1か所に5粒以上蒔き、2cmほどの間隔を開けなかった)
(5) 間引きが遅れ、曲がった側の側根の肥大が不良となり、変形した。(本葉2〜3枚と5〜6枚のときに間引かなかった)
(6) 間引きの時、双葉の形が揃っているものを残さなかった。(葉が欠けたり、左右の大きさが違うときは、側根の肥大に影響して曲がった)

  Q3:「だいこん」が辛すぎるのは、なぜですか。
  A3:夏の「だいこん」は辛味が強くなります。「だいこん」の辛味成分は、アリルイソチオシアネート(辛子油)ですが、その前駆物質が夏の「だいこん」には多くなります。これは腐らせないようにしようする生理現象で、高温や乾燥、窒素過多でも辛味や苦みが強くなります。一般的には代謝生理の激しい若い「だいこん」は、収穫適期のものに比べると辛味が強くなります。辛い「だいこん」を少しでも緩和するには、ゆっくりすりおろし、30分ほどおくという方法があります。すりおろした「だいこん」の辛味は、5分くらいでMaxになります。

  Q4:「だいこん」が太りません。どのような原因が考えられますか。
  A4:「だいこん」は発芽してから根が下に伸び、30日くらい過ぎると徐々に太り始めます。このあと次第にだいこんが地上にも伸びてきて、およそ60〜70日で収穫期となります。「だいこん」が太らない原因としては、次のようなことが考えられます。
(1) 株間が狭すぎる。(標準は25〜30cm)
(2) 土壌が硬くて、根が太れない。(30〜40cmは深耕)
(3) 肥料が足りないか、追肥量・回数が少ない。
(4) 日光が少ない。
(5) 粘土質で排水が悪い。
(6) 生育初期に乾燥害を受けた。(初期にス入りした)
(7) アブラムシなどの吸汁害を受けた。

  Q5:「だいこん」が縦に裂けました。
  A5:「だいこん」の根部が肩割れや尻割れ、縦割れなどになるのは、乾燥状態が続いた後に、大雨などで急激に水分が供給されるときに起こります。これは根内部が急激に肥大し、皮相部の成長が伴わなくて裂根するためです。対策としては、水もちのよい土壌を選び、過度の乾燥を避けるるようにします。

  Q6:「だいこん」にスがはいったが。
  A6:「だいこん」に「す(鬆)」が入るのは、真夏の猛暑や冬の霜にあたり、葉から通常以上の水分が奪われて土の中の根の水分が不足するのが原因です。また、葉付きの状態で保存していても、葉柄から水分が抜けて「す(鬆)」が入りやすくなります。

  Q7:「だいこん」の芯が褐色なっています。
  A7:「だいこん」の根にす(鬆)が入り、芯が褐色になるのは、褐色芯腐れ症という生理現象です。これは、多雨や乾燥、土壌の強酸性・強アルカリ性などによってホウ素が欠乏したために起こります。

  Q8:「だいこん」の地上部が曲がります。どのような原因が。
  A8:大根の「地下部が曲がる」原因は、次のようなことが考えられます。
(1) 石や固形有機物、施肥ムラ、排水不良、耕耘不良、うねの高さ不足などで、根の伸びが妨げられた。
(2) 3年以上前の古い種を蒔いた。
(3) 土壌害虫(根腐れ線虫など)が生育初期に根を食害し、変形した。
(4) 蒔いたタネの間隔が近く、葉が干渉して軸が曲がった。(1か所に5粒以上蒔き、2cmほどの間隔を開けなかった)
(5) 間引きが遅れ、曲がった側の側根の肥大が不良となり、変形した。(本葉2〜3枚と5〜6枚のときに間引かなかった)
(6) 間引きの時、双葉の形が揃っているものを残さなかった。(葉が欠けたり、左右の大きさが違うときは、側根の肥大に影響して曲がった)

  Q9:「だいこん」の肌が汚いのは。
  A9:「だいこん」の肌が、市販のようにつやつやにならず汚くなるのは、土壌中に生息する「ねこぶ線虫」の仕業です。被害にあった根も、食用にするのには、とくに支障はありません。防除としては、農薬(ネマトリン等)を使用するのが一般的ですが、前作にマリーゴールドをつくったり、ニームの葉を入れる方法もあります。ふだんから堆肥を多く施し、乾燥を防ぐことが大切です。

  Q10:「だいこん」の葉がモザイク模様になりました。
  A10:「だいこん」の葉が緑色濃淡のモザイク模様になり、縮んで生育が悪くなるのは、モザイク病(ウイルス病)と考えられます。モザイク病にかかると、根も太らず、表面が凸凹になったり、奇形になったりします。またモザイク病はアブラムシがウイルスを媒介するので、アブラムシを徹底的に防除します。罹ったら農薬はないので、病株は抜きとり、畑から持ち出して処分します。

  Q11:「だいこん」を連作すると辛味が少なくなる。
  A11:ふつう連作は良くないといわれますが、だいこんを連作すると次第に辛味成分が少なくなり、甘いだいこんとなります。その理由はまだわかっていません。

  写真提供: 「ボタニックガーデン」  イラスト: 「ころぽっくる」 by lemさん
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