たまねぎ(玉葱)
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プロフィール
ユリ科ネギ属の多年草で、学名は Allium cepa。
中央アジアの山岳地帯が原産と推定されています。古代エジプトでもすでに栽培されていました。わが国へは江戸時代に渡来していますが、本格的に栽培が始まったのは明治時代になってからです。春から肥大し始め、夏には球形となる鱗茎を食用にします。品種としては東ヨーロッパ系の辛たまねぎと、南ヨーロッパ系の甘たまねぎに分けられますが、わが国で栽培されているのはほとんど辛たまねぎです。
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系統・品種と用途
「たまねぎ」のなかでも「黄たまねぎ」がもっとも広く出回っています。そのほかにも「赤たまねぎ」や「白たまねぎ」、「ペコロス」などの系統があり、さまざまな用途に利用されます。
わが国の本州から九州で栽培されるのは短日系品種ですが、北海道では春にタネをまき、秋に収穫する長日系品種となります。(長日系品種は、14〜14.5時間の日長で肥大を開始します。)
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栽培のポイント
「たまねぎ」を栽培するにあたっての基本条件および栽培のポイントはつぎのとおりです。なお作型は、品種によって異なる場合がありますので、タネ袋に記載されている内容をよく確認してください。
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気候区分
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作業
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1
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3
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温暖地 |
種まき |
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植えつけ |
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収穫 |
(翌年)
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気候区分
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まきどき (春|秋)
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収穫時期 (春|秋)
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寒 地 |
04/上〜04/下 |
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09/上〜10/下 |
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寒冷地 |
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08/下〜09/中 |
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06/中〜07/上 |
温暖地 |
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09/上〜09/下 |
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05/中〜06/下 |
暖 地 |
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09/中〜10/上 |
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05/上〜06/中 |
ご注意
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発芽温度は4〜30℃、生育温度は5〜25℃なので、これを外れるときは、加温または遮熱をしてください。寒地(北海道)では、長日系品種を使い、春まきです。
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℃
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152025
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発芽適温
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15-20
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生育適温
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15-20
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栽培のポイント
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品種によってまき時が異なり、時期を違えると早く抽苔してしまうので注意が必要です。
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pH
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5.06.07.0
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土壌酸度
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6.0-7.0
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栽培のポイント
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ほとんど中性の土壌を好みます。酸性土壌ではかならず石灰を施し、よく耕してから栽培にとりかかってください。
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年
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0 |
1 |
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9 |
10 |
作付け間隔
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0
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栽培のポイント
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ほとんど連作障害はでませんが、リン酸やカルシウム分の吸収量が多いので、連作する場合は元肥に注意が必要です。
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栽培のステップ
「たまねぎ」を栽培するとき、種まきから収穫までの作業ステップは、およそつぎのようになります。ここでは、小さなホームガーデンを想定した一般的な方法を説明しています。
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ステップ
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内容
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種まき・育苗
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(1) 育苗箱(51型)にタネまき用土を入れ、条間7〜10センチに深さ1センチほどのまき溝をつけます。タネを1センチくらいの間隔で条まきし、5ミリほどの覆土を掛けます。
苗床の時は、1平方メートルあたり100〜150gの苦土石灰で中和したあと、2〜3kgの完熟堆肥と80〜100gほどの有機配合肥料をよくすき込んでおきます。
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(2) 草丈が6〜7センチのころに混み合うところを間引き、株間に追肥を与えます。
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(3) 草丈が20〜25センチになるまで育苗します。
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(5) 「たまねぎ」の種まきは、時期厳守です。温暖地では、早生種は9月5日、中生種は9月15日、晩生種は9月25日が目安となります。このまき時を間違えると、不時抽苔(ちゅうだい)を起こしたり、青立ちになったり、分けつ苗になったりします。
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畑の準備
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(1) 植え付けの2週間以上までに、畝の全面に、1平方メートルあたり100〜150gの苦土石灰を施しよく耕します。
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(2) そのあと2〜3kgの完熟堆肥と80〜100gほどの有機配合肥料をよくすき込み、よく耕して、幅90センチ、高さ10センチほどの畝を立てておきます。
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植えつけ
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(1) 高さが20〜25センチになったころ、10〜15センチの株間に植えつけます。たまねぎ用マルチを利用すると雑草の管理がし易く、地熱を上げるため発根を促します。
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(2) 植えつけるときは、茎の白い部分が2センチほど地上に出るくらい、浅植えします。
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(3) 65センチ深型プランターでも8〜10株ほどは栽培できます。
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追肥・管理
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(1) 12月中旬と3月上旬に、株間に有機配合肥料を追肥として与えます。
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(2) 生育期は、土の表面が乾いたら水やりをします。
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(3) 株元が露出しないように、ときどき土寄せをしてください。
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(4) 「たまねぎ」は長日刺激によって球が肥大を始めます。この気温と日長時間は、タマネギの品種によって異なります。
極早生種: 15℃以下で、11〜11.5時間以上の日長
中晩生種: 15〜20℃で、13.5時間以上の日長
晩生種: 20〜25℃で、14.25時間以上の日長
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収穫
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(1) 茎葉が80パーセントくらい倒伏したころが収穫の適期です。晴天を見計らって収穫します。
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(2) 天日で3〜5日ほど乾燥させます。乾燥すると茎葉が柔らかくなり、紐で縛りやすくなります。このとき、根や茎葉を切らないようにします。(フザリウム菌が球に入り、腐敗するのを防止するため)
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(3) 収穫した「たまねぎ」は、4〜5株くらいずつまとめて、風通しのよいところに吊して保存します。およそ2週間で乾燥するので、この後、必要に応じて茎葉や根を切るようにします。
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おもな病害虫
「たまねぎ」には、よくアブラムシやタマネギバエ、ネギアザミウマなどがつきます。また、軟腐病やべと病などの病気も発生します。
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「たまねぎ」のQ&A
Q1:「たまねぎ」の球が太らないのは。
A1:「たまねぎ」の球が大きくならないのには、二つの原因が考えられます。
(1) 細い苗(1〜3mm)を植え付けて、あまり葉が大きくならずに、鱗茎の肥大がはじまり、球の小さな状態で収穫期になったとき。
(2) 大きな苗(5mm以上)を植え付けて、鱗茎が肥大するまえに抽苔(とうだち)してしまい、球が大きくならないとき。
Q2:「たまねぎ」の球が大きくなる前に抽苔しました。
A2:「たまねぎ」はグリーンプラントバーナリゼーション(緑植物春化)型の作物で、一定の大きさに達した苗が連続して低温にあうと花芽分化します。早まきや肥料過多で、寒さが来る前に大苗になると、春に抽苔(とうだち)してしまいます。これを防ぐには、タネまきを適期に行い、定植するのは茎の太さが1cm以内のものだけにします。
Q3:「たまねぎ」が貯蔵中に腐ります。
A3:「たまねぎ」の肥大後期に肥料が残っていると、窒素の遅効きで貯蔵性が低下し、腐りやすくなります。適期に収穫すれば、家庭でも3月ごろまで貯蔵できます。収穫遅れは腐敗の原因になるので、葉が80%くらいが倒伏したときに収穫します。また、軟腐病は生育終盤と貯蔵中に発生します。収穫は晴れの日に行ない、球を傷つけないようにして、風通しのよいところに吊して乾燥させます。
Q4:「たまねぎ」の長日性・短日性とは何。
A4:「たまねぎ」の鱗茎が肥大するためには、温度とある程度の日照時間が必要です。「短日性のたまねぎ」は12〜14時間の日照時間、「長日性のたまねぎ」は14〜16時間の日照時間によって肥大が始まります。したがって、赤道から離れた地域では、「長日性のたまねぎ」が、赤道近くでは「短日性のたまねぎ」が栽培されています。もし「短日性たまねぎ」を赤道から離れた地域で栽培すると、あまり早くから結球し、結果として大きな鱗茎にはなりません。反対に「長日性のたまねぎ」を赤道近くの地域で栽培すると、肥大する日照時間が得られず、いつまでも結球しません。
Q5:「たまねぎ」の定植のタイミングは。
A5:「たまねぎ」は、大苗を定植すると抽苔(とうだち)が多くなりますので、葉の数が3〜4枚、長さが25〜30cm、株元が鉛筆ぐらいの太さ(4〜6mm)の苗が良いとされます。定植時期は、早生種で10月末から11月上旬、中・晩生種で11月中旬から下旬が基準です。これから逆算して、50〜60日前がタネまきの適期となります。
Q6:「たまねぎ」の苗が消えてしまいました。
A6:畑に植えつけた「たまねぎ」の苗が、部分的に生育が悪くなり枯れてしまうのは、一種の「はえ」の幼虫が原因です。小さな「はえ」が苗の根元に卵を産みつけ、それが幼虫になって、根茎を食害します。食害された苗は引き抜いて、新しい苗を植え替えるしかありません。
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写真提供: 「ボタニックガーデン」 イラスト: 「ころぽっくる」 by lemさん
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